あらすじ
これを書くことをお別れの挨拶とさせて下さい――。思いがけない大波にさらわれ、夫とふたりだけで無人島に流されてしまったかのように、ある日突然にがんと診断され、コロナ禍の自宅でふたりきりで過ごす闘病生活が始まった。58歳で余命宣告を受け、それでも書くことを手放さなかった作家が、最期まで綴っていた日記。
目次
第一章 5月24日~6月21日
第二章 6月28日~8月26日
第三章 9月2日~9月21日
第四章 9月27日~
<出版社より>
山本文緒さんがジュニア小説を書かれていた時代からの読者です。
「ぼくのパジャマでおやすみ」や「おひさまのブランケット」なんかが特に好きだった記憶があります。
成長するにつれてジュニア小説からも離れていき山本文緒さんの小説を読む機会もなくなっていたのですが、ある日一般文芸に転身されていることを知り手に取りました。それが「ブルーもしくはブルー」です。こちらはドラマ化もされていて高視聴率だったんですよね。
以降、発売されるたびになんとはなしに手に取って読んでみる作者さんでした。きっと相性がよかったんでしょう。
「ファースト・プライオリティー」くらいまでは読んでいたのですがその先は読んでなかったんですよね。「自転しながら公転する」も好評だったのでそのうち読んでみようと後回しにしてるうちに、書店で「無人島のふたり」を見て訃報を知りました。
気にはなったものの今まで後回しにしていたくせに、亡くなられたから読んでみようというのも気が引けて避けていたんです。でも本屋さんに行くたびに目に入り、いつかは読むことになるのかな、でも悲しい気持ちになるだろうしなとやはり避けていたですが、ある日家に帰ると机の上に図書館で借りた「無人島のふたり」が。母が借りてきたんです。そしてようやく腹を決めたというか、やっぱり読むべき本なんだなと手に取ったんです。
長々と書きましたが結論は、読んでよかった。
この本は記録です。闘病記ではなく日記。もちろん悲しい部分もあるのですが、穏やかに思うように最期を迎えられたのがわかり読んでいるこちらも穏やかな気持ちになれました。
そして作家とは【作家という生き物】なんだと思い知らされました。
最期の一文
「今日はここまでとさせてください。明日また欠けましたら、明日。」
<本文より>