あらすじ
よかったら俺を拾ってくれませんか──。思わず拾ってしまったイケメンは、家事万能の植物オタクで、風変わりな同居生活が始まった。とびきり美味しい(ちょっぴりほろ苦)“道草”恋愛小説。
【植物図鑑 CONTENTS】
1. ヘクソカズラ
2. フキノトウ/フキ そしてツクシ
3. ノビル/セイヨウカラシナ
4. 春の野花ータンポポ、イヌガラシ、スカシタゴボウ
5. ワラビ/イタドリ
6. ユキノシタ
7. ノイチゴ
8. イヌビユ/スベリヒユ そしてアップルミント
9. アカザ・シロザ/ヨモギ そしてハナミズキ
10. 巡る季節
カーテンコール ゴゴサンジ
カーテンコール 午後三時
あとがき
巻末特別付録 イツキの”道草料理”レシピ
<出版社より>
道端にイケメンが落ちてたら拾いますか?拾いませんか?
この本を読んだ後なら確実に「拾います!」と答えることでしょう。100%間違いなく。
とはいえ、実際には怖くて拾って帰れないし、そもそもイケメンは落ちてない。残念ながら。
有川浩改め有川ひろさんの「植物図鑑」。発売当初は本屋のコーナーで見当たらず、図鑑コーナーに配置されることもしばしばだったこの一冊ですが、間違いなく、疑いようもなく、有川ひろさんの作品の中で一二を争う恋愛小説です。
「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」
「咬みません。躾のできたよい子です」
本文より
そんな一言から始まったさやかとイツキの奇妙な共同生活。
イツキは宣言通り「躾のできたよい子」で同居人としてパーフェクト。洗濯も料理もこれまで荒れてたさやかの生活が一変するくらいに。
それが物足りなくなって来るさやかだけど、必要以上に踏み込むとイツキが去ってしまうかも…。
そんなモダモダを抱えつつストーリーは進みます。
でも、私がこの作品を何度も何度も読み返すのはそこだけじゃないんです。
「狩り」と称して近所の土手やそれこそ街中を散歩しながら食べられる植物を採集し「料る」。
イツキはびっくりするくらい草花に詳しくて、食べられる植物か園芸品種なのかプロ並みに見分けるんですよ。しかもそれをきっちり料理してそれがまたさやかの胃袋を掴む!さやかだけじゃなく読者の胃袋も鷲掴みですよ!食べてないのに!
「狩り」のシーンでは草花の描写が詳しく出てきて、そんなとこにも普通に食べられる植物が生えているのかと驚いたり、都会でも意外と身近に季節を感じられるものなんだなと気付かされたり。
実際、それまでは散歩していて花を見かけても「綺麗だな〜」くらいにしか思わず、まあ写真は撮ることもあるけれどそのまま素通りなんて事が普通でしたが、この本を読んでからは、「あれはなんて花なのかな?」「植物図鑑に出てきたやつじゃない?」とか、それこそ公園に密集しているミントを引っこ抜いてきてベランダで育てたりも(笑)。
巻末には「イツキの”道草料理”レシピ」が付いていて、作品中のレシピが載っているんですよ。
その一つに「ノビルのパスタ」があって、どうしてもそれが食べたくて主人の田舎に帰った時に「道の駅とかにノビルは売ってない?」って聞いたんですよね。そしたらなんと!「裏に生えてるよ」って!裏に!生えてる!まさに「植物図鑑」!自分で採って作った野菜の美味しかったこと!
ちなみにこの作品で「料る」という言葉を覚えました。有川さんの造語かと思ったらきちんと辞書に載ってて反省。色々勉強になる作品ですね。
恋愛本としても料理本としてもおすすめの作品です。読後、ぜひお散歩に出掛けてみてください。