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和書

空の中<感想> ー謎の航空機事故、その正体は? 自衛隊三部作・空自編ー

あらすじ

高度2万メートル--そこに潜む「秘密」とは?
200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残ったパイロットは調査のため高空へ飛ぶ。そこで彼らが出逢ったのは……? 全ての本読みが心躍らせる超弩級エンタテインメント。

<出版社より>

 

空の中 有川浩
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有川ひろ・自衛隊三部作の第二弾。
有川ひろさんの初期の作品で自衛隊三部作と呼ばれるうちの一つです。
最近の有川ひろさんの作品はハートウォーミングな作品が多いんですが、初期の頃はとんでも設定が多くどちらかといえばSFチックな作品が多かったんです。特にこの「空の中」を含む自衛隊三部作は特にその傾向が強く、初めて読んだ時は「え?え⁉︎」って感じになったんですが、今では大好きなシリーズの一つで何度も読み返しています。

ストーリーの軸は2本。謎の航空事故の生き残り自衛隊員と航空機メーカー社員のコンビ視点と事故当日に謎の生物を発見した少年とその幼馴染視点。大人視点と子供視点が謎の生物を通して交錯していく物語です。
謎の生物との交信だったり、戦闘機シーンや空自の内部実情だったり政治的背景だったり、かなりSF要素や戦闘もの要素強めかと思いきや子供達の成長過程だったり大人たちのもどかしい恋愛事情だったり。とにかく登場人物の心の機微が繊細に描かれていて一つの作品によくもまあこんなにもギュッと詰め込んだものだと読むたびに感心しますね。それでいてどれをとっても決して雑じゃないんです。全てが丁寧に繊細に扱われている。これは有川作品の特徴の一つだと思います。

個人的には、登場人物の一人・春名高巳と謎の生物ディックとの会話が好みでしたね。定義の擦り合わせから始まり言葉遊びしているようで巧妙にやりとりが進んでいく。こういうの大好きです。本好きさんだとわかってくれる方も多いんじゃないかなぁ。
そして「宮じい」の存在。こういうお年寄りの存在って本当に貴重です。頭ごなしに抑えつけない。でも間違った方向にいきそうな時は手を差し伸べてくれる。ごくごく普通の人。この普通の人っていうのが今では本当に貴重なんじゃないですかね。そしてそういう人がそばにいたら素直にそれを受け止められる人である事もとても重要だと感じます。難しいですけどね。

さて、先程「自衛隊三部作・第二弾」と言いましたが、なぜ第一弾から紹介しないのかと思われるかしれません。
実はこの作品、先日紹介した「私たちの金曜日」に収録されている「ファイターパイロットの君」の本編に当たる作品なんです。(「ファイターパイロットの君」の初出は「クジラの彼」に収録)こちらの短編を久々に読んだら本編をどうしても読み返したくなって再読しちゃいました。
「空の中」「ファイターパイロットの君」どちらから読んでも楽しめます。楽しさ倍増です。

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