あらすじ
その愛は、あまりにも切ない。
正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく。
本屋大賞受賞作『流浪の月』著者の、心の奥深くに響く最高傑作。
ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。
ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。
<出版社より>
著者紹介
京都市在住。2007年に初著書が刊行されデビュー。BLジャンルでの代表作に'21年に連続TVドラマ化された「美しい彼」シリーズなど多数。'17年に『神さまのビオトープ』(講談社タイガ)を刊行し高い支持を得る。'19年に『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。'20年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。同作は'22年5月に実写映画が公開された。'20年刊行の『滅びの前のシャングリラ』で2年連続本屋大賞ノミネート。本書は約2年ぶりの長編となり、第168回直木賞候補、2022王様のブランチBOOK大賞、キノベス!2023第1位などに選ばれている。
<出版社より>
櫂と暁海の高校時代の花火の思い出を軸にストーリーが展開されていく。
いつの時代も「自由に生きていくこと」とは難しいことなんだなと。
普段は意識していないようで無意識に感じ取っている生きにくさ。正しい基準や標準というものがあると思い込んでいることに気付かせくれる。
そしてそんな生きにくさをまるっとそのまま肯定してくれる物語でした。
「人に答えを求めるから苦しいのだ。
自分がどうありたいかの選択権は、いつでも自分の手の中に在る。」<本文より>
私の選んだ人生は本当に私が選び取った人生なのか。
今日着ていく服、ランチのメニュー、映画は何を見ようか…。夥しい小さな選択を重ねて私たちは毎日を過ごしていますが、改めて今ここに立っている奇跡に感謝したいと思えました。人生の岐路での選択が、人生を築いていくんですね。
日々、小さな後悔はあるけれど、ふと立ち止まった時に幸せだな、と感じることができる今がどれだけ貴重なのかと。
ストーリー自体は目新しいものではないですし、テーマも今の時代にはよくみられるものかと思うのですが、それでも読者を惹き込む文章力に圧倒されました。重く暗いテーマなのに読了後は穏やかな気持ちになる不思議な作品です。
ノミネート作品全10作は2023年本屋大賞ノミネート作品 ーノミネート10作品を一挙公開ーよりどうぞ