あらすじ
夏休み、お金がなくて暇を持て余している大学生達に風変わりなアルバイトが持ちかけられた。スポンサーは売れっ子心理コンサルタント。彼は「純粋な悪」を研究課題にしており、アルバイトは実験の協力だという。集まった大学生達のスマホには、自分達とはなんの関わりもなく幸せに暮らしている家族を破滅させるスイッチのアプリがインストールされる。スイッチ押しても押さなくても1ヵ月後に100万円が手に入り、押すメリットはない。「誰も押すわけがない」皆がそう思っていた。しかし……。
<出版社より>
本屋で初めて見た時サイコロジー系の小説だと思ったんですよね。何故だか自分でもわからないんですけどミステリーだとは一切思わなかったんです。宣伝文句に「本格ミステリー長編!」って書いてあるにも関わらず(笑)。
スイッチを押すのか押さないのか、そのせめぎ合いや心の葛藤を描いて最後まで引っ張ってハラハラドキドキさせるのかと思いきや、前半割と早い段階でスイッチ押されちゃいます。そこで初めてこれってミステリー小説だって気づきました。
実は私ミステリーってついつい犯人を先に知りたくなっちゃって我慢できずに最後から読んじゃうん事が多いんですよね。犯人を知ってから安心して読むという、ミステリーファンには理解できないタイプの人間です。
でもこの本に関してはミステリーだと気づいた時点でも「じゃあ、犯人は?」って何故だかならなかったんです。それよりも論点が押すか押さないかではないならどうやって残り8割進めていくのか、どこが論点になるのか、それが気になって気になってわざわざ読む手を止めてまで犯人探しをしようなんて気が起こらなかったんです!これってミステリー小説を最後から読んじゃう人間にとってすごい事なんですよ。
しかも犯人探し以外にも、登場人物たちの過去や心情、考え方が興味深くてとても惹きつけられる。6人の被験者がいるんですがそれぞれタイプが違っており、「そういう考え方もあるのか」とため息が出ることもしばしば。
例えば、被験者の一人の徐さんの台詞。「怖くなんかないですよ。だって、押してもいいと思ってるから」(本文より)
押してもいいんだ…。そうなんだ…。
他には別の被験者の台詞で「同族嫌悪かしら。かわいそうだけど、腹も立つわ。やっぱり押しちゃうかも」(本文より)
やっぱり押しちゃうかもなんだ(笑)。そしてそれを言っちゃうんだ(笑)。
とか、ちょっと私では思い付かない意見だったり笑えたり。そういうエッセンスが散りばめられていてそこにも注目させられるんです。
で、佳境に入ってくるとやっぱり犯人が気になる癖が出てきたんですけど、わざわざ手を止めて犯人確かめにいくよりも今このまま一気に読み進めたい!って気持ちが勝っちゃって最後はノンストップで読みました。おかげで翌日仕事なのに寝不足で眠くて眠くて…。
サイドストーリーがなかなか面白いので、普段はミステリーあんまり読まないんだけどという方にこそお勧めしたい一冊です。